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集団催眠の記憶

私がまだ幼少(5歳か6歳)のころ、父に連れられて、小学校の講堂で催された気合術の実験と講演(当時、怪しげな講演がいろいろあった)を見にいった記憶がある。出し物としては、真っ赤に焼けた鉄の棒を手でしごいたり、体中に畳針を刺したり、そのほか不可思議な技がいろいろあった。それらを演じた最後に、「今、外は雨が降ってきた。今日、来てくださった皆様全員にお礼として傘を進呈する」
と言い、大人全員(このあたりの記憶は定かではないが)に傘を配った。私の父も傘をもらい、その傘をさして家に帰った。家に着いたら、どういうわけか空には雲ひとつ無く月が出ていて、傘だと思って手に持っていたのは、”割り箸”だった。という経験がいまだに意識の底にこびりつくように残っている。今、考えてみれば、これが私と催眠術の初めての出会いであったような気がする。

私の父は、私が27歳のときに他界しているが、若いころから不可思議な話や超常現象に類する話題が大好きだった。父が実際に見た非常に不可思議な催眠術の講演会の話や、霊媒実験の話もいろいろと聞かされている。大正時代から昭和ひと桁の時代のはなしである。
父が話してくれたのが本当の話で、インチキでないとするならば、その当時は日本にも優れた催眠術師が数多くいたことになる。

超知覚が芽生え、同時に頭もよくなる!?

催眠術というと、「テレビで見たことはあるけど、やらせじゃないの」ぐらいの認知度しかないのが現状である。だが、テレビでやっているのは本当であり、しかも催眠のごく初歩にすぎない。
催眠の世界は奥が深い。私も催眠術を実践・研究するようになって、はや40年を超える。その間、どうしても科学的に説明できない現象を何度か経験している。

ある人の依頼で、高校を受験する子供に催眠を施したことがある。受験のために集中力をつけ、勉強が好きになるようにならないか、という依頼だ。その催眠の暗示カテストの段階でいろいろな実験をやってみたが、その中でこんなことがあった。
 被験者の右腕の隣に一本の大根を置き、「この大根は、あなたの右腕ですよ」という催眠暗示を与えておいて、その大根をつまようじてチクチク刺す。すると被験者は、大根が刺されると同時に、右腕につまようじで刺されたと同じ痛みを感じる。次にその大根を腕から遠く離し、同じ実験をしてもやはり同じ反応を示す。

ここまでは「暗示作用」ということで、科学的に説明できるだろう。しかし、この大根を被験者から見えない場所に置いて刺しても、あるいは被験者に目隠しをして実験しても、同時刻に同じ反応を示したのである。これには、やった私のほうが驚いた。被験者はいったいどうやって、大根が刺されたことを感知したのだろうか。
 その後、何回か試したが、結果は同じである。当然、現在の科学では説明不可能だろう。
 また、次のような例もあった。

私の古くからの知人で樋□(仮名)という男がいる。彼は非常に楽しい男なのだが、一般常識的なことに対してはいっさい無頓着な性格で、新聞の政治欄などはおよそ読んだことがない。その彼をある酒席で催眠導入し、「政治評論家」だと思い込ませた。いわゆる人格変換誘導である。
 すると驚いたことに、いきなりむすかしい言葉を随所に入れ、世界情勢をとうとうとしゃべりだしたのである。しかも、こちらの質問に対しても、すらすらと答えることができた。どう考えてもデタラメをいっている感じではない。
 私自身、彼が、そんなむずかしい話は絶対にできないことはよく知っている。だから、そのとき一緒にいた7、8人全員が”樋口は普段わざとバカなふりをしてたんじゃないの”という言葉が出るくらいびっくりしたのである。

福来友吉

最近わかったことだが、福来友吉博士も催眠実験を何度も行っていた。記録によれば、ある実験で、催眠に入っていた被験者が、博士の机上に置かれていた専門書の何ページに何が書かれているかをピタリといい当てたことがあったらしい。しかもこの被験者は、高等教育を受けた人ではなく、その学術書の内容を理解することなど、とても不可能だったという(「催眠術の日本近代」 一柳廣孝著、青弓社より)。これは私の行った実験とまるで同じではないか!

図 2:福来友吉博士。超常能力の実験を行い、世界に先駆けて「念写」という現象を発見した。

催眠下で顕現した脅威の予知能力

いろいろな体験を経るにつれ、私は催眠が人間の能力をどこまで引きだせるのか、その興味にかられ、さまざまな実験を試みていった。

もう十数年も前のことである。叔母を催眠誘導し、世界最高の「霊能者」だと思い込ませてみたことがあった。最初はありきたりの質問から始まり、たとえば「近いうちに、東京に大きな地震はありますか」という質問に対しては、叔母は何も考えずに「ないわよ、これから10年はない。だけど西のほうにはあるわね」という答えが返ってきた。

私としては、その当時から10年は東京に大地震はないが、西のほうには10年以内に大きな地震があると受け止めた。それから数年が過ぎた1995年1月に阪神大震災が起きた。叔母がいったのはこのことなのかどうか、今もよくわからない。だが、叔母の言葉で、私が西のほうで大きな地震があると感じたことは確かである。

次に、ある若者が「今つきあってる彼女とは結婚できますか」と質問した。それに対しては、あっさりした口調で「だめっ、その彼女、あんたじゃない男がいるじゃない、その男と結婚するのよ」という。
私はそのとき、まずいことをいうなと思った。はずれたらどうするつもりなのか。だが、それから約4か月後、叔母の予言はズバリと当たった。若者の彼女は別の男と結婚したのである。

また、当時、ホステスをやっていたある女性が「私と今一緒にいる男ですけど、この人とは将来どうなるでしょうか」と聞くと、叔母は今度は非常にむずかしい顔になり、しばらく考えてから「その男の人は何という名前」といい、名前を聞くとまたしばらく考え、「今年いっぱいね、来年になると会えなくなるわ」とはっきり答えたのだ。

その答えに対して女性が「ほかに好きな女がいるとか・・・」というと、それには答えられず、何か考えている状態が続いた。
 しかし、これもそれから約半年後、驚くべき結果がわかった。その男性は傷害事件を起こし、前科があったため、その年の暮れから7年の刑で服役することになったのだ。
このとき質問した人たちは、全員、叔母とはまったくの初対面であり、ましてやホステスがつきあっている男性に前科があったなどということはだれも知らなかった。

また、ほかの実験で、その場にたまたまスポーツ新聞があったので、次の日の競艇の予想をしてみようという話になった。
 ほとんど遊び半分で、4、5人いたなかの森出(仮名)という男を選び、催眠導入し(彼は以前に何度か催眠導入している。また、競艇は知っているがあまり興味はない)、次の日の予想をさせたところ、もしも12レース中すべて3点買いしていたら、10レースは的中していたという結果が出た。

その後、偶然か偶然でないか、もう一度やってみようということになり、再度、試みたところ、今度は8レース中7レース的中という結果が出た。
 このとき、森出は初回のときも2回目もなぜか「頭が割れるような猛烈な痛み」に襲われたそうである。それ以後、この実験はやっていない。もちろん、森出の頭の痛みは、これも催眠によって徹底的に抜いたことはいうまでもない。

ほかの実験では、他人の小銭入れの中身は、ほぼ確実に当たるという結果が出た。被験者を催眠導入し、小銭入れの中を”見させた”ところ、10円玉いくつ、100円玉いくつ、と正確に答えるのである。しかし、紙幣や力-ドなど、いろいろなものが入った財布はうまくいかなかった。

それにしても、これはどういうことなのだろうか?こうなるとただの思い込みではとても説明できない。明らかに超常能力が芽生えたとしか思えないのである。ただ、おもしろいことに、この種の実験は、催眠に入ればどんな被験者でもできるというものではなかった。といっても、被験者がもともと特別な能力を持ち合わせていたというわけでもなさそうなのだ。私もよく知っている叔母がそうであるように、普段はごく普通の人たちなのである。
この差がどこにあるのか、この超常能力がどこからくるのか、なんとも答えの出しようがないのが現状である。