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催眠術についての質問-その1

まず、「催眠」には、「自己催眠」と「他者催眠」があります。

「自己催眠」とは、自分で自分の心をコントロールし、誘導していく技法で、「他者催眠」とは、他の人を催眠誘導していくことを言います。

他者催眠の利用法としては数限りなくあります。まず、人間の病には、肉体的な病と精神的な病があります。

たとえば、極度のストレスを抱えている人、悩みごとをずっと抱えている人、これはりっぱな「精神的な病」に入ります。

そのような状態の人は後遺症として、偏頭痛、肩こり、胃炎、その他いろいろな二次的な症状が出てきます。そこで一時的にでも、ストレスを取り除いてあげたり、悩みごとを忘れさせてあげるのが「他者催眠の力」なのです。

また、イライラ、緊張、不安、あがり等を取り除いてあげたりと、精神的な治癒力に関して言えば、「催眠の力」が最高であると言っても決して過言ではありません。しかし、なんでも催眠で治せると思うのは、非常に危険な場合があります。あくまでも医師との連係プレーでなくてはいけません。

医者に行っていろいろな検査、診察をしたところ、肉体的にはどこも悪いところはないと医師に診断されたのに、なにか一日中頭が痛いとか、胃がチクチク痛むとか、そのような被験者の場合、「催眠」の出番になるわけです。

しかし、あなたが催眠誘導がある程度できるようになったとき、催眠に導入して、ただ、「偏頭痛は完全に治りました」とか「胃の痛みはもう忘れました」では、そのとき一時的に治ったにしても、すぐに元に戻ってしまいます。

そこでまず、ストレスや悩みごとの。”根っこ”を探り出し、取り除いたり忘れさせてあげなくてはなりません。それにはまず「カウンセリングをかねたラポール作り」から始まり、催眠導入のあと、「どのような角度から”暗示”を与えていくか」、ここが非常に重要なポイントになってきます。

そこで、あなた独自のアイデアとセンスが生かされてくるのです。

たとえば欧米では次のような例がありました。

ある若者が、ガールフレンドとドライブを楽しんでいたとき、そのガールフレンドが急に腹痛に悩まされ、たまたまその彼氏の方が催眠術ができたので、催眠でその痛さをとってあげたところ、うそのようにケロッと治ってしまい、そのまま何日かたって、また腹痛になったので今度は医者に行ったところ、盲腸と診断され、手遅れ寸前だったという例があります。

この場合、催眠で痛みは忘れさせても、盲腸の治療にはならなかったというよい例だと思います。もしも二度目に腹痛になったとき、そばに彼氏がいて再び催眠で痛みを忘れさせてしまったらその後どうなったか、催眠者として人事ではすまされないような気がします。

催眠は、ときには考えられないくらいの力を発揮します。しかし、決して過信してはいけません。

どちらが難しいかといえば、「自己催眠」のほうが数倍難しいと言えるでしょう。催眠誘導する場合、難しい順番としては、自分で自分を誘導する「自己催眠」につづいて、自分の父母、兄弟等、また、あなたが催眠術をやるようになったずっと以前から親しく付き合っている幼なじみ、友人などを上げることができます。

要するに、あなた自身のことをあまりにも知りつくしている人は、どんなに素直な人でも、”こいつに催眠術なんかかけられて、私の心をコントロールできるわけがない”という反発心を多少なりとも持っています。したがって、初心者のうちは、あまり親しい人を被験者にして練習しないほうがよいと思います。

しかし、上達してラポール作りが上手になってくると、父母だろうと幼なじみだろうと、誘導することは可能になってきます。

最初のうちは特に、あまり親しくない人を被験者に選ぶことをお薦めします。

また、人の言うことを絶対に聞かないガンコな人、催眠を極端に嫌う人等は最初のうちは避けたほうがよいと思います。

よく”あいつはバカだからすぐかかっちゃう”とか”単純だからすぐかかる”という言葉を耳にします。

そんなことは絶対にありません。むしろ、知能の優れた人、何事にも探求心を持ち、頭脳明晰な人のほうが深く入ります。また、普段からイメージカに優れた、芸術家タイプの人等は、非常にスムーズに誘導することができます。

強いて催眠誘導しにくいタイプの人をあげるならば、こちらの言葉の意味を理解できない人、精神に異状をきたしている人等を上げることができます。

男性と女性ではどちらのほうが誘導しやすいか、という質問もよく受けますけど、これは非常に難しい質問で、私としてはまったく同じだと思います。しかし私の経験では、女性のほうが時間的に早く誘導されたように見えるだけで、深い催眠に誘導されていくのはむしろ男性のような気がします。これは男性と女性の筋肉組織の違いとか、ホルモン組織の違いによるものではないかと思います。

特に最初の「運動支配」に誘導するときは、「筋肉組織」のことを頭に入れておかなくてはなりません。

催眠術についての質問-その2

初心者として最初のうちは、十才から十五才くらいまでの、大人の言うことをよく聞く素直な子供を被験者にすることをお薦めします。そして、必ずそばに第三者がいることを条件に、テスト練習することが望ましいでしょう。そばに誰もいないと、被験者に恐怖心を持たせてしまう場合があります。

次にあなた自身がリラックスして、ちょっとしたゲーム感覚で始めるとよいと思います。そのときあなたは被験者に、初心者だということを絶対にさとられてはいけません。

少し慣れてきたら、飲み会とか、ちょっとした家族パーティー等で練習してみるのもよいと思います。そのようなときは催眠に興味のある若い女性が望ましいでしょう。

“アルコールが入っていても、催眠にかかるのか”という質問もよくありますが、泥酔状態は別として、人間アルコールがちょっと入ると、普段よりもリラックスした状態になります。したがって誘導しやすくなることも事実です。

催眠の誘導技術を上達させるには、いろいろなタイプの被験者に接してみなくてはなりません。いろいろなタイプとは、男性、女性、年齢的に、下は六才ぐらいから、上は八十才くらいまで、あなたの言うことをよく理解できる人なら誘導することは可能です。

ただし、あまり高齢者になると、難しいところがありますので、最初のうちは避けたほうがよいと思います。

催眠は、覚醒法がしっかりしていれば、後遺症は絶対にありません。
しかし、一人の被験者に何度も導入していると、その被験者の導入されるテンポがどんどん早くなり、しまいには、指ひとつ鳴らしただけで、運動支配も感覚支配も通り越していきなり記憶支配に入ってしまう場合もあります。

したがって一人の被験者に、いたずら半分に掛け続けることは、絶対にやってはいけないことです。

私事で恐縮ですけど、私は四十年以上催眠にたずさわり、今まで何千人という被験者を対象に、いろいろな催眠をやってきました。しかし、今までに後遺症になった人は1人もいません。これで後遺症はないという証明になるのではないでしょうか。

はっきり言って同じです。しかしメンタルトレーニングの場合は、自己催眠的なこと(自律訓練法等)を取り入れた指導が多く、他者催眠的な誘導はあまり取り入れていないはずです。「瞑想誘導催眠」等は取り入れる場合はありますが、強力な他者催眠誘導はまだ日本では取り入れていません。私個人としては、何人かの有名プロスポーツ選手の個人指導はやっていますが、メンタルトレーニング的な指導ではなく、あくまでも他者催眠的指導です。結果としては、心のトレーニング、心のコントロールに関して言えば、「催眠」以上のものはないと断言します。

近年日本でも、各種プロスポーツの世界や大学の運動部では、メンタルトレーニングは当たり前に取り入れられるようになりました。これも最近の話で、一昔前までは、スポーツは肉体の鍛錬と練習のみであり、心のトレーニング等は考えませんでした。

私の知るかぎりでも、優秀な指導者に恵まれ、すばらしい効果を上げているのも実際に見ています。
要するに、メンタルトレーニングも「催眠」なのですから、書籍等で覚えようとしても無理が出てきます。やはり、しっかりした指導者について学ぶべきだと思います。

催眠術についての質問-その3

これは非常によい質問です。これから催眠を覚える上で、絶対に頭に入れておかなくてはいけないことです。わかりやすく簡単にお答えします。

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。

普段仕事をしていて気が張っているときとか、神経をピリピリしてなにかをやっているときや、緊張時等に働いているのが「交感神経」で、のんびりリラックスしているとき、眠っているとき、好きな音楽等を聞いていい気持ちでウットリしているとき、等働いているのが「副交感神経」になります。

人間は、一日二十四時間のうち、この両交感神経が、片寄らないようにバランスよく働いていればよいのですけど、心配事があったり、イライラしていたり、緊張時が続いたりすると、「交感神経」が働きっぱなしになってしまって、「副交感神経」に変わらないため、結果として不眠症、肩こり、胃炎その他の後遺症につながっていきます。

「催眠」は、まず副交感神経を出すように誘導していくことから始まります。

「催眠者」となるあなた自身で、これからは、今は「交感神経」が働いている、今は「副交感神経」が働いていると意識してみることも必要です。

非常に物騒な質問ですが、誰もが興味のあるところです。

催眠を相当研究している心理学者の先生でも、死につながるほどの極端な状態になると理性のほうが勝ってしまって、催眠から覚めてしまうため不可能だと言います。

しかし、絶対に不可能であるとは言えません。私が実験したわけではないので、それ以上のことは言えませんが、何回も言うように、「催眠の誘導技法」はアイデアとセンスです。理論や能書きではありません。このへんはあまり詳しく書くと、さし障りがありますので、武道の世界に相通ずるところがある、とだけ記しておきます。

町に出れば、刃物等すぐに手に入ります。しかし、これを凶器にして悪用しようと思う人がいても、事前にわかるはずがありません。どこの家庭にでもある包丁も、料理を作る道具にもなり凶器にもなるのです。これはその人の理性の問題です。催眠も同じことが言えます。悪用しようと思えば確かにできます。しかし、悪用できるくらいの技術ということは、それまでに多数の実験、練習を重ねた相当の熟練者でなくては無理です。

最初は不純な気持ちから、催眠を覚えようという気持ちがあったにしても、少しできるようになり、本当に自分のものにしようと思ったとき、そのときはもっと上達しようという気持ちから、最初の気持ちとは変わっているはずです。

たとえば、ケンカに強くなろうという気持ちから空手を習い出した若者が、やがて有段者になり、空手の魅力に取りつかれたとき、初心の気持ちはなくなっているのに似ています。何事も”ちょっとかじる”というのが、一番よくないような気がします。

催眠の場合、ちょっとかじったくらいでは、悪用できるほどの「技術者」には、絶対になりません。

我々人間は、知らず知らずのうちに人に暗示を与えたり、人から暗示を与えられて生活をしています。しかしほとんどそれに気付いていません。

約三才から六才くらいまでの幼児のお母さんは、その子供にとって世界一の催眠術師であると言われています。お母さんのその子供に言う言葉は、ほとんど暗示語として伝わってしまうのです。子供のうちに潜在意識に蓄積されてしまった暗示は、一生取れない場合もあります。たとえば”おまえは本当にバカな子だね”と毎日のように言い続けたとしたら、その子供にとって最悪の事態を招きます。その反対に、学校ではまったく勉強のできない自分の子供に”おまえは天才だ、おまえは必ずすごいことをやる”いう言葉をいつも言われているうちに、世界的な発明家になってしまったのがあの「エジソン」であると言うのは有名な話です。

あなたがもしも風邪をひいて、薬局に薬を買いに行ったとき、初めて聞いた名前の薬とテレビコマーシャルでいつも見ている薬と値段が同じだったらどちらを買いますか。よほどのへそ曲がりでない限り、コマーシャルで見ていたほうの薬を買うと思います。これも暗示効果です。

このような「暗示」を、「暗示語」として意識して使い、被験者をトランス状態に誘導していくのが「催眠」です。