氣も催眠も同じ 意識を通じ身体をコントロールする

≪月刊「秘伝」2007年5月号より転載≫

氣もまた心と意識へ働きかけることで、身体をコントロールするという点では催眠と同じだ。

例えば氣功では施術者が出した氣を被験者が意識し、身体に影響を与える。また効果は違うが冒頭に例として出した触れずに相手を吹き飛ばすのも、意識へ働きかけている点では同じで、どちらも催眠で言うところの他者催眠に近い。

また中国拳法の站椿やヨーガなどで”全身に気を巡らせる感覚を開く”と指導されるが、これもまた意識を通じて自分の身体をコントロールする作業であり、こちらは自己催眠と言えるだろう。

いずれにしろ氣をコントロールするという作業自体が、自己・他者を問わず意識を通じて身体に問い掛ける作業であり、その点では催眠のプロセスとほぼ同じだ。吉田氏は、「氣の全てが催眠だとは言いませんが、心と意識を通じて身体に働きかけるということに関しては催眠と氣は同じだと思っています。特にプロセス・技術という点では、催眠のテクニックを学ぶことで、意識で身体をコントロールする”氣”を通常の何倍も早くマスターすることができます」と言う。

それでは具体的に氣と催眠に共通する要素はなんだろうか?

「イメージです。氣でも催眠でも”どれだけリアルにイメージできるか”それが一番大事です(吉田氏)」

確かに多くの武術が行う”氣”の養成方法も、様々なイメージを持つことで行われる。例えば太極拳では”両手で氣の玉を転がすように”といったイメージを用いる稽古が行われているし、吉田氏が実践する太気拳なども同様だ。

「太気拳で氣を養う立禅は”巨木を抱える”というイメージで行いますが、これはほとんど自己催眠ですよ。ただ先程”リアルに”と言いましたが、これは別に細部まで思い浮かべるというのではなく、本当に心の底に”それがある”と入れてしまうのが重要なんです。心に入ってしまえば、考えなくても本当に感じることができる。自分の抱える太い古木や、葉っぱを揺らす風の匂いを感覚を含めて本当に感じることができるんです。そして催眠の技術というのは瞬間的に心の奥にそのイメージを入れてしまうことなんです。これが催眠でいうところの自己催眠ですね。これができると氣の習得は凄く進みますよ」

では自己催眠を我々が行う方法は無いのだろうか?

「あります。まず全ての基本となるのが”リラックス”で、これは一番大事なんです。どんな時でもサッとリラックスできる。それができれば武術はもちろん生活全部が変わってきますよ」

今回は、特別に吉田氏にご紹介いただいたリラックスするための自己催眠方法を特別に公開、別項にまとめた。興味のある方は是非お試し頂きたい。

「私は武道に催眠は必要不可欠だと思っています。よく”目分を信じて”と聞きますがそれでは弱い。”ある”と本当に感じることで自分も変わるし、それが他の人にも影響を与える。例えば宮本武蔵は自己催眠の天才だったと思いますね。どんな場面でも自分が勝つことを疑わずにいられたから、リラックスして落ち着いて闘え、それが相手にとって気圧された感覚、”氣”の存在として伝わったのだと思います(吉田氏)」

“氣”というと、何か相手をコントロールするイメーージがあるが、何よりも先にまず自分の心をコントロールすることが、気を自分のものにする第一歩なのだろう。そして催眠には、確かにその為の鍵があるのだ。